技術情報
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鍛造用語集
鍛造用語集【か】
カウンタブローハンマ | 上部ラムの下降に連動して、下部ラムが上昇し、中央の位置で、上下の金型が相打ちする機構のハンマ。主な方式としては、上部加圧式でバンドカップリングを持つカウンタブローハンマと液圧式ラム連結機構を持つカウンタブローハンマとがある。 |
加工硬化 | 金属の塑性変形において、再結晶温度以下では、ひずみの増大に伴い変形抵抗が増加する現象。材料は塑性変形を受けると結晶方位が回転するとともに、結晶中の転位数が増し、互いに絡み合うことによって転位が動きにくくなる。単軸引張り若しくは圧縮真応力と対数ひずみとの間に、σ=Fεⁿの形の実験式を当てはめることがある。ここで、Fはε=1のときの応力で塑性係数と呼ばれ、nは加工硬化指数である。加工硬化指数は単にn値とも呼ばれ、板材の加工限界を評価する1つの指標等としてしばしば用いられる。ひずみ硬化。 |
加工誘起マルテンサイト | 塑性加工を行うことにより生ずるマルテンサイト。18-8ステンレス鋼の室温(マルテンサイド変態温度(Ms点)以下の温度)における変形などで見られる。 |
かじりきず | 鍛造品の一部が金型によってかじり取られて出来たきず。 |
型当り面 | 一対の金型の型彫り面上の彫込みがない部分で、打撃時に閉じて接触する面。ハンマ鍛造型では型当り面で下死点位置が決まり、型当り面が多いほど、厚さ精度が良く、厚さのばらつきが少ない。 |
型打ち | 鍛造作業を行うこと。元は自由鍛造に対して、金型を用いて鍛造すること(型鍛造)の意味で使用されていたが、現在では自動鍛造機を使用する場合も含めて鍛造を行う意味として用いられている。 |
型打ち面積 | 型鍛造の際、鍛造荷重が主に働く面積。通常は、型彫り形状にばり道面積を加え、それを鍛造方向の面に投影して出来る面積。 |
型かじり | 金型と材料の間、又は雄型と雌型の間で、引っかききずが生ずる現象。原因には、潤滑膜切れ、異物混入、狭過ぎるクリアランスなど、型条件の不適合等がある。 |
硬さ検査 | 硬さ試験機を用い、製品の表面に、一定の荷重で一定形状の硬質の圧子を押し込むか、又は一定の高さから重錘を落下させるなどの方法で、硬さを測定し、その値がその製品の規格内にあるかどうかを判定する非破壊検定方法。硬さ試験機には、ブリネル硬さ試験機、ビッカース硬さ試験機、ロックウェル硬さ試験機、ショア硬さ試験機などがある。 |
型寿命 | 製作した金型が、摩耗又は破損のため、そのままでは使えなくなるまでに、型打ちできる鍛造品の個数。型寿命には、①使用する金型が割れによって破損する場合と、②金型表面の摩耗又はだれによって鍛造品が型から取り出せなくなるか、鍛造品の品質、仕様が維持できなくなって寿命となる場合とがある。型命数。 |
型ずれ | 上下金型の心違いによって生じた鍛造品の形状の食い違い。 |
型鍛造 | 型彫りされた金型を鍛造機械に取り付け、この型内に素材を入れて、所要の形状に圧縮成形加工する方法。同一形状の製品を大量に生産する場合に採用され、寸法精度が高くかつ複雑なものまで、成形加工を迅速に行うことができる生産性の高い加工法である。ばり道、ばりだまりを設けた一対の金型を用いて、余分な材料をばりとしてはみ出させて行う一般的な鍛造(ばり出し鍛造)のことを、密閉鍛造、閉塞(そく)鍛造と区別していう場合もある。 |
型調整 | 型鍛造において、段取替え後、最初の鍛造品を検査して、型ずれ、厚み等の不具合を直すこと。 |
型割線 | 型鍛造品の鍛造図上で、一組の金型が互いに合わされる線。上下の金型が合わされたときに金型によってばり溝の方向に向かって形成される閉じた輪郭の中にできる空間的線をいう。型鍛造品の設計に際して、材料歩留り、抜け勾配、生産性、品質、金型加工などの決定に関係する設計上の最重要要素である。 |
過熱 | 材料の諸性質が損傷される程の高温度まで、材料が熱せられること。 |
加熱温度 | 材料が最も適切な温度に均一に加熱される温度。特に、その際の最高温度は材質により異なるので、管理が重要である。 |
かぶさりきず | 鍛造品の表面に生じた肉のかぶさり。段落差の甚だしい異径軸の隅肉部などに生じやすい。 |
「かんばん」方式 | トヨタ自動車㈱が最初に採用した生産管理方式のことで、必要なものを、必要なときに、必要なだけ生産すること(JIT:ジャストインタイム)を目標として、不必要な在庫を減少させ、生産の合理化を図るために行った部品調達方式。製造指示書の機能を持った「かんばん」が、各工程ごとに適正在庫量を充足する枚数が発行され、工程の進捗に伴って部品に付けられている「かんばん」は前工程へ回され、部品を補給するための製造が行われる。このようにして、作り過ぎが自動的に防止され、一定量の在庫以上は生産できない。 |
機械的性質 | 材料に外力を加えて行う試験の結果得られる諸特性。降伏点、耐カ、引張強さ、伸び、絞り、硬さ、疲れ限度などがある。材料の物理的、化学的あるいは電気的性質等に対比して用いられる。 |
亀甲割れ | 鍛造品の表面に現れる比較的浅い亀(かめ)の甲状の割れ。加熱条件不適当で、特に銅、すずなどの不純物が、結晶粒界に析出するために生じた割れ。 |
QC工程表 | 工程管理計画の中で、計画時には、その中心となる管理資料としてまた工程管理の実施時には、工程の管理標準として活用されるための標準。QC工程表はQC工程図、管理工程図、工程保証項目一覧表、管理項目一覧表など種々の呼称が用いられており、それぞれ内容や使い方に多少の相違はあるが、工程管理計画の具体的なまとめとして、あるいは工程管理標準として用いられる。 |
球状化焼なまし | 変態点近傍で長時間保持して鋼中の炭化物を球状化させるために行う焼なまし処理。この処理によって靱性や加工性が増大し、工具鋼にあっては工具としての性能が良好となる。処理条件としては、炭素鋼及び合金鋼によって、処理温度、時間を異にする。一般的には次の5方法が挙げられる。①AC₁点以上やや高い温度に加熱した後、徐冷する。②AC₁点以下20~30℃低い温度に長時間保持する。③A₁点の上下20~30℃の間において加熱と冷却を繰り返す。④焼入れ焼き戻しを行う。⑤焼入れ恒温変態を利用する。 |
急冷割れ | 過熱した材料を急激に冷却するとき、温度不均ーのために発生した内部応力による割れ。 |
矯正 | 鍛造品を規定寸法に収めるため、主に曲げ、ねじり、肉厚調整等を行う再度の成形作業。 |
共析 | 1つの固容体から2種の固体が、ある一定の割合で、同時に混合物が析出して出来ることを共析という。共析晶の組織は主として層状である。鉄ー炭素合金においては、共析晶組織をパーライトといい、726℃において、オーステナイトからセメンタイトとフェライトとが層状となって析出したもので、その炭素量は約0.85%である。 |
キルド鋼 | 溶鋼を、フェロシリコン、アルミニウムなどで十分脱酸して鋳込んで製造された鋼。脱酸が十分にされているため、静かに凝固する。この鋼は、電気炉、転炉などで作る高級鋼に用いられ、材質は各部大体均一である。 |
空気ドロップハンマ | ドロップハンマの1種で、ラムは、圧縮空気を使用して、ピストンとシリンダとによって吊り上げられ、落下するときは自重のほか、ピストン上部に作用する空気圧によって加圧される複動式空気ハンマ。打撃力は、自由落下パンマより大きく、足踏みペダルの踏込み量によってストローク長さと空気の吹込み量が変化し、自由に加減することができる。最近、ラム速度を増大して打撃回数を多くした高速空気ドロップハンマが開発された。 |
クランクプレス | クランク軸を使って、ラムを往復駆動する形式の機械プレスの総称。長いストロークを必要とする場合にはクランクピン形式、ストロークが短くて強力な加工をする場合にはフルエキセン形式、一般用にはセミエキセン形式のクランク軸が多く使用される。 |
クリープ | 試験片を一定の温度に保持し、これに一定の荷重を加えたときに、時間とともにひずみが増大する現象。 |
繰返し応力 | ある一定の極大値と極小値との間を、単純にかつ周期的に変動する応力。 |
黒皮 | 鍛造したままの鍛造品の肌で、通常はスケールを取り除いた後の状態。黒皮のまま使用される部分のある鍛造品は、黒皮部分に母材の表面きず、鍛造きずなどが残存していることがあるので、要求仕様によって、渦流又は磁粉などの探傷検査が必要である。 |
クロスへリカルローリング | 外周面上に螺旋(らせん)状又はリング状の山形を持った2個又は3個の同形ロールを、それらの軸を、素材軸に対し、ある一定角度だけ傾けて設定し、同方向に同速で回転して、素材をロール間隙に押し込んで成形を行う加工法。クロスローリングとヘリカルローリング(3個のロール使用)とを組み合わせた加工法である。 |
クロスロール | 表面に山形を持った一組の金型を相対運動させることによって、材料を転動させつつ、丸棒素材を半径方向に圧延する転造加工機の総称。(トラバース)ウェッジローリングとクロスへリカルローリングとの2種類に大別できる。 |
結晶粒度 | 結晶粒の大きさ。一般に結晶粒度は、鋼の性質に大きな影響を及ぼし、低合金鋼、高炭素鋼の場合、高温度におけるオーステナイトの粒度が大きいほど、靱性が低下する。粒度の表示は、JIS、ASTMなどに規定された粒度番号で表すが、粒度番号が大きいほど結晶粒は細かい。粒度には、フェライト粒度とオーステナイト粒度とがある。 |
欠肉 | 鍛造図面寸法に対する鍛造品の厚さ、太さ、丸みなどの不足。 |
コアドフォージング | 閉塞鍛造の1種。材料を金型内に閉じ込めてから、2方向以上からパンチを押し込み、成形をする。主に中空製品の鍛造を行う場合に用い、複動形の特殊構造のプレスが必要である。 |
恒温鍛造 | 金型と材料を同じ一定温度に保ちながら行う軽合金、耐熱合金などに応用される熱間鍛造。 |
恒温変態 | オーステナイト状態に加熱した鋼を冷却するとき、ある温度まで下がった温度で冷却を止め、その温度で行わせる変態。べイナイト組織は、これにより得られる。等温変態。 |
鋼塊 | 転炉、電気炉などの製鋼炉で精錬した溶鋼を、鋳型に注入して凝固させたもの。鋳型は、丸形、四角型、六角型、八角型など、その後の圧延鍛造などの都合に合わせて各種がある。鋼の場合は、脱酸素法によって、キルド鋼塊、リムド鋼塊に大別される。 |
工具鋼 | 切削用工具、耐衝撃用工具、耐磨不変形用工具などの製作に用いられる鋼。一般に、摩耗に耐える性質が要求され、硬さが高いことが必要である。0.6~1.5%の炭素を主として含有した炭素工具鋼と、炭素の外に、ニッケル、クロム、モリプデン、バナジウム、タングステン,コバルトなど、合金元素を添加した合金工具鋼とがある。 |
鋼材のチャージ管理 | 鍛造品を、使用された鋼材の溶解(チャージ)ロットごとに識別できるように、明確に区分して管理すること。その主たる目的は、鍛造用鋼として同一鋼種であっても、溶解ロットが変わると化学成分含有量が微妙に変化し、その特性に差が生じることから、鍛造品の熱処理、あるいは加工後の高周波焼入れ・浸炭焼入れなどの熱処理条件を、溶解ロットごとの特性によって設定するためである。また何らかの不具合が発生した際も、チャージ管理がなされていれば、その範囲を特定する上でも有効であることから、品質管理上、義務づけられる場合が多い。通常、製品に溶解ロットを示す略号を表示することで識別する。 |
降伏応力 | 引張試験ないし圧縮試験において、材料が降伏し塑性流動するときの応力。軟鋼のような材料では下降伏点、一般の金属材料では0.2%塑性ひずみを生じる耐力が、降伏応力と見なされる。 |
降伏点 | 軟鋼の引張試験において、荷重が小さい間は応力とひずみとはほぼ比例関係にあるが、荷重がある値になると一時減少し、やや低い荷重を保ったままでひずみが増加する現象がみられ、これを降伏と呼ぶ。降伏現象が生じているときの応力を降伏点又は降伏応力という。降伏し始める以前の最大応力を上降伏点、降伏中の応力を下降伏点、降伏する間のひずみを降伏ひずみという。 |
後方押出し | 金型にすき間なく嵌合(かんごう)する材料を、パンチで圧縮し、パンチと金型のすき間又はパンチの内部に、材料を流動させて、底付き円筒状の製品や軸状部品を作る方法。材料の流動する方向がパンチの加圧方向と逆方向であるのが特徴である。 |
降伏条件 | 組合せ応力が作用している材料が降伏するとして設定した条件。応力成分の関数式の形で表される。トレスカ(Tresca)の降伏条件とミーゼス(von Mises)の降伏条件がよく使われる。 |
固溶化熱処理 | 鋼、ステンレス、アルミニウム合金等の合金成分を固溶体に溶解する温度以上に加熱し、十分な時間保持して、急冷し、合金成分の析出を阻害して、常温で固溶体の組織を得る操作のこと。 |